公益情報者保護法と転職情報サイト・ネット掲示板への投稿 【従業員編】

 「公益情報者保護法」と聞いてピンとくる方の方が少ないのではないでしょうか。

 企業の不正に対する内部告発者を守るために制定された本法律。今回は「公益情報者保護法と掲示板への投稿」をテーマとし,公益情報者保護法の解説,及び「従業員」「企業」がそれぞれ知っておきたい知識について解説いたします。

まずは前編として従業員が企業の不正を目撃してしまった際にどうするべきか?「従業員編」です。

公益情報者保護法とは

 先述した通り,労働者が公益のために通報を行った際に解雇等の不利益な取扱いを禁止する法律です。

「転職情報サイト」への投稿は「公益通報」にあたる?

 では,実際に企業内で不正が生じている場合に「転職情報サイト」へその事実を投稿することで,公益情報として共有することは本法律の保護の対象になるのでしょうか。

公益通報者保護法では,第2条でどのような通報が「公益通報」に該当するのか要件が定められています。

「公益通報」に該当するための要件


 「公益情報」であるためには「その目的」「通報対象事実」「通報先」等について,それぞれ法律が定める下記の要件を満たす必要があります。

・通報の目的は不正な目的ではない
・通報対象事実:国民の生命,身体,財産 その他の利益の保護にかかわる法律規定されている犯罪行為の事実であること

等が対象とされています。

様々な法律が対象となりますが,具体例を挙げれば,企業が食品衛生法上認められていない物質を使用して商品を製造しているケースが通報対象事実に該当します。

対象の法律については公益通報者保護法別表第八号の法律を定める政令)からも確認することができます。
どこに通報すべきか?「通報先」について


 ではいざ通報するとなったときに誰に通報すればいいのでしょうか。本法案では通報先についても下記の条件が設けられています。

・事業者内部
・通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政機関
・通報対象事実の発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者である事業者外部の者

以上を前提に,転職情報サイトに開設された自身が所属する企業の掲示板への口コミの投稿は,「公益通報」に該当するのでしょうか。

転職情報サイトは「通報先」には該当しない


 この点,転職情報サイトは事業者外部の者ですが,運営主体に対して,通報対象事実を通報することがその発生や被害の拡大を防止するために必要であるとはいえませんので,通報先の要件には該当しないといえるでしょう。

したがいまして,転職情報サイトへの口コミによる通報は,「公益通報」には該当しないと考えられます。

 それに加え,会社の情報を広くインターネット上に公開することは,大きな影響を及ぼします。
営業秘密に該当する情報であれば,懲戒処分を受けるリスクや,損害賠償請求を受ける可能性さえあります。投稿する口コミ内容は慎重に検討すべきでしょう。

公益通報を行うときの注意点

 公益通報者保護法が制定されたのは,従業員が公益通報を行ったことに対し,会社が報復的措置として不利益な処分を科すことが後を絶たなかったことが背景事情として存在します。しかしながら,誠に残念なことに法律が制定されてもこのような事実はゼロにはなっていません。
 
 実際に企業の不正等を目撃してしまったら,まずは自分が「通報者として守られるか」(通報者の個人情報が守られるか)を確認したうえで然るべき機関に通報すべきでしょう。

終わりに

 公益情報者保護法制定後も,通報を行うことによって従業員に不利益な処分が科されていることは事実ですし,そのような処分が法廷で争われることもあります。

「従業員としては看過することのできない事実を放置できない」という正義感とこうした現実のはざまで悩んでいる方は,通報前に通報方法や内容について弁護士に相談してみるのも得策です。

 次回は公益情報者保護法と「企業として知っておきたい知識」についてをご紹介いたします。